詳細画像(越中継清）
江戸時代後期の半太刀拵が付属した在銘の刀をお届けします。作者は継清で、越前の
刀工であり徳川家康の抱え工となって「康」の字を賜った康継の弟子です。元々は
越前の刀工であったようで、銘鑑には「越前」と書かれていますが、この刀を見る
限り、同じ北陸の富山に住み、鍛刀をしていたことが明らかです。越前は松平家、
越中と加賀、能登は前田家ですから、異なる家中をどういった理由で移ったので
しょうか。継清を研究する上で貴重な一振りかもしれません。
この刀は、直ぐ調子の刃を焼いていますが、単純な直刃ではなく、二重刃や足、葉の
入った働きの多い刃紋です。また、その刃を焼く地鉄は良く詰んでおり、この継清の
腕が相当に高いことを示しています。この技量があったからこそ、本国の越前を出て、
前田家の一部である越中富山に呼ばれたのかもしれません。
興味深いのはなかごです。この刀は３寸以上区（まち）を送って刀身の長さを10
センチほど詰めています。そのため、なかごの長さは20センチを超える長さとなって
います。やや長いものですが、それは、なかごに銘を残すためでした。これが実は、
本来の磨上げ（すりあげ）の形です。持ち主も細工をする職人も、きちんと銘のある
刀の、肝心の銘を切り落とすことは極力避けようとするのは当然です。この刀の
なかごはかなり古い時代に磨上げられたと思いますが、銘をすべて残すために、
このような形に整えたと考えられます。
（逆に、磨上げ無銘の刀は、それが本当に鑑定通りの時代と作者なのか、我々は、
鑑定書を盲信せず、きちんと自分で判断しないといけません。在銘で、時代を経ること
で研ぎ減っている古刀と、無銘でも刀身が非常に健全な、同じ刀工の作と鑑定されて
いる刀とが目の前にあったとして、どちらが本当に評価すべき、本物の一振りなので
しょう。）
この継清には、時代のある半太刀拵が付属しています。柄の長さも鞘の長さもこの
刀身にぴったりと合っています。興味深いのは鞘で、黒の石目塗に二つの家紋が
描かれています。今、同じような塗りをさせるのはなかなか大変でしょう。江戸時代の
職人の腕を感じさせます。時代が経っているために、鞘の張り合わせ部分に少し割れが
ありますが、飾るには全く問題ないと思います。小柄櫃は殆ど埋まってしまっています
ので、無理に開け直さずに、小柄櫃に小柄だけを入れておきました。鍔は越前記内の
在銘で葵透しの図という、記内の得意とするデザインです。目貫は兜を赤銅の地金に
金と銀の色絵でしょうか、精緻に打ち上げています。これらもきっとお楽しみになれる
と思います。
裏側の切先より7寸半くらいの鎬地に数ミリの柾割れが見えますが、全体の美観を損ねる
ほどの物ではありません。刀、拵ともに、端正な良い出来だと思います。富山藩か、
その本藩である加賀藩前田家の、やや小柄な体格の大身家臣の差料ではなかったかと
思います。
白鞘入り刀、時代のある半太刀拵、記内鍔と、それぞれを別々に購入されると
今回の提示価格よりずっと大きな金額になってしまいます。トータルとして見て
お値頃でしょう。是非、皆様のお手元にどうぞ。
大きな星のついた鮫皮です。
